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zoom RSS お粗末な自衛隊の医療体制

<<   作成日時 : 2015/09/30 21:19   >>

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「お粗末な自衛隊の医療体制」

 自衛隊の衛生体制の不備については、以前から専門家らに指摘されていたが、「WiLL」11月号に都立広尾病院院長の佐々木勝氏が、「あまりにお粗末な自衛隊の医療体制」と題した記事を寄稿している。佐々木氏は、「防衛省・自衛隊の第一線救護における適確な救命に関する検討会」の座長でもある。記事の要旨は以下の通り。

 ○自衛隊には中央病院や地区病院があるが、そこで勤務する医官たちは普段、救急対応をほとんどやっていない。中央病院の救急車搬入数は、広尾病院の僅か0.03%(平成26年)に過ぎない。生死を分ける急患の対応は、ひとえに経験がものを言うが、医官はその経験を積むことができていない。
 しかも、戦場での負傷は、通常の事故や事件によるものとは全く異なっており、有事の際、ぶっつけ本番状態で治療に当たることになる。果たして爆薬で顔を負傷したり、四肢が吹き飛ばされた隊員に適切な処置ができるだろうか、甚だ疑問。
 ○戦傷医療は第二次世界大戦以降、この70年間で大きく変わった。いまはできるだけ四肢の機能を残すことを考え、再接着できるものはして、なるべく四肢の欠損や障碍が残らないような処置を行うためのバックアップシステムが構築されている。
 米軍では、部隊の救護所、前線の外科チームに運び込むまで1時間、戦闘支援病院へ24時間以内に搬送、72時間以内に戦闘地域以外の病院へ搬送が可能。米軍はこのシステムを実践したことにより、戦闘死亡者数は減少し、死亡率をベトナム戦の15.8%からアフガン・イラク戦では9.4%まで減らした。この治療システムは、世界の戦場に広がっている。
 ○一方、自衛隊は、上記検討会を立ち上げ、戦場で負傷した場合、隊員同士でどうやって応急処置を行うか、どこまでの処置を可能とするか話し合っている段階。しかも、検討会では医官はオブザーバーとして座っているだけで積極的に発言しない。
 ○救急救命士以上の医療行為を衛生隊員等に認めないと、防ぎ得た戦傷死を減らすことはできない。
 ○9月には入ってから、第一線救命のための教育制度と法改正の検討開始を決めたようだが、救命隊員の育成に着手するのは平成29年度から。
 しかもその間、医官や中央病院、防衛医大などには改革の手が及ばないので、いくら前線の隊員が応急処置をしたところで、救える命も救えない。自衛隊や政府の動きは緩慢に過ぎる。
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 佐々木氏は、以上の問題点を指摘した上で、自衛隊の戦傷医療システムを向上させ、防ぎ得た死を防ぐために以下の取り組みを提案している。
 @使用させる兵器も含めた戦闘やテロに関わる情報を、医学的な側面からアドバイスできるシンクタンクを創設。
 A戦闘やテロに特化した医療の体系を作り、安全・安心を提供。
 B日本版NSCに医療担当部署を設置。
 C救命だけでなく、可能な限り身体機能を温存するためのシステムを構築。
 D医師個人の力量ではなく、組織を整え、情報も国家安全保障にかかわるものとして管理。
 E米国や英国、イスラエルなど実戦経験のある軍と交流し、有事の際は医学的観点を政府要人にアドバイスできる組織を構築。
 F本来、自衛隊の役割が大であるが、臨床経験が乏しいため、民間の経験者も活用。
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 佐々木氏は、「このままでは結局、『誰かが命を落すまでは戦傷医療の対策は行われない』という事態になりかねません」と危惧しているが、恐らくその通りになるだろう。
 法律の不備もさることながら、従来、予算不足から正面装備が重視され、後方が疎かにされるという極めてバランスの悪い防衛力整備が行われてきた。従って、継戦能力を欠き、いざとなっても戦えないのではないかと、陸上幕僚長経験者も懸念している。
 医療(衛生)体制も疎かにされてきたもののひとつだ。個人携行救急品ひとつとっても、自衛隊のそれは米軍等と比べて貧弱であると、清谷信一氏が「軍事研究」10月号の記事「安保法制が成立すれば命懸けの戦場が待っている 陸上自衛隊の『個人携行救急品』 兵隊を殺すな!片端にするな!」で指摘している。また、自衛隊の衛生部隊には、装甲救急車も搬送用ヘリコプターも無いと、同氏は常々指摘している。

 ただ、政治家や防衛省・自衛隊が殊更隊員の命を軽視しているとは思われない。「いざとなったらアメリカ様が守ってくれる」という属国人根性にどっぷり染まり、真剣に有事を想定してこなかっただけだろう。
 しかし、GHQ体制から脱却するには、そんな甘えは許されない。医療体制に限らず、後方体制全般の充実整備が焦眉の急だ。

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
初めてお便りさせていただきます。
自衛隊の医療がお粗末なのは、自衛隊の問題ではなく、日本の医療システム全体の問題だと思います。その訳ですが、日本の医療界は医師以外の者に医行為をさせたくないらしく、救急救命士制度が誕生したのは僅か20数年前ですし、それ以前の救急隊員には満足な処置が認められておらず、ただ病院へ搬送するだけでした。AEDを使用した電気ショックについても約10年前までは一般市民には認められていませんでした。欧米と違って、日本の医師(特に厚生労働省)は市民の救命率を向上させることよりも、自分達の独占的な権利を守ることにしか興味がないように思えます。救急救命士の処置拡大ですらなかなか認めないのですから、自衛隊の衛生隊員等に多くの処置が認められるようになるには、戦争でも起こって多くの自衛隊員の命が失われないと変わらないでしょうね。最後に、清谷氏が言っている個人携行救急品の内容不足ですが、法的に認められていないから包帯以上の物は支給されていないのではないでしょうか?清谷氏は緊急避難的に隊員間で医療行為をやれと言うんでしょうかね??
天孫降臨
2015/10/04 21:25

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