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zoom RSS 自衛隊に在外邦人救出はできない

<<   作成日時 : 2016/01/03 21:02   >>

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「自衛隊に在外邦人救出はできない」

 12月31日付産経新聞に読者に誤解を与える以下の記事が出ていた。
 「陸自、極秘に邦人救出訓練
 安保法成立を受け武器使用
 陸上自衛隊が、海外でテロなどに巻き込まれた邦人を救出する訓練を極秘に行っていたことが30日、分かった。今年9月に成立した安全保障関連法で邦人救出に必要な武器使用が認められたことを受け、陸自『中央即応集団』(司令部・神奈川県)が11、12両月に2度実施。テロの脅威度が高まる中で、部隊の実戦投入に向けて大きく踏み出した。
 安保関連法成立を受けた新たな訓練が明らかになったのは初めて。
 中央即応集団は国際平和協力活動の専門部隊。国連平和維持活動(PKO)などで先遣隊として派遣され、在外邦人救出任務でも主要な役割を果たすことが期待されている。救出訓練は、11月初旬に東富士演習場(静岡県)、12月10〜16日には相馬原演習場(群馬県)で行っていた。
 11月の訓練は武器の使用方法に重点を置いた。これまで自衛隊の武器使用は、正当防衛など自己保存型に限定されていたが、安保関連法で武装集団などを排除する任務遂行型も新たに認められたためだ。
 訓練は海外で救出した邦人を車両で輸送する際、群集に進路を妨げられる事態を想定。群集を排除するための任務遂行型の武器使用として小銃で警告射撃を行い、武器使用に至るまでの行動も検証した。
 12月の訓練は、治安が悪化した国にある日本大使館が群集に包囲されているとの想定で、小銃などを所持した中央即応集団の隊員が大使館内に『強行進入』して救出する任務を行った。
 この訓練では、陸自が新たに配備した耐弾性の高い輸送防護車MRAP(エムラップ)と、上空から情報を収集する小型無人機『ドローン』を投入した。防衛省はこの訓練に続いて17、18両日に行った従来通りの邦人輸送訓練のみを公表した」。
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 12月19日付の当ブログにも書いた通り、昨年9月に成立した安全保障関連法のひとつ、自衛隊法改正で新たに加わったのは「在外邦人等の保護措置」(第八十四条の三)であり、「救出」ではない。しかも第八十四条の三には下記の制約が付いており、危地に陥った在外邦人を救うことなぞ到底できない。同条文は以下の通り。
 「防衛大臣は、外務大臣から外国における緊急事態に際して生命又は身体に危害が加えられるおそれがある邦人の警護、救出その他の当該邦人の生命又は身体の保護のための措置(輸送を含む。以下『保護措置』という。)を行うことの依頼があった場合において、外務大臣と協議し、次の各号のいずれにも該当すると認めるときには、内閣総理大臣の承認を得て、部隊等に当該保護措置を行わせることができる。
 一 当該外国の領域の当該保護措置を行う場所において、当該外国の権限ある当局者が現に公共の安全と秩序の維持に当たっており、かつ、戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。第九十五条の二第一項において同じ。)が行われることがないと認められること。
 二 自衛隊が当該保護措置(武器の使用を含む。)を行うことについて、当該外国(国際連合の総会又は安全保障理事会の決議に従って当該外国において施政を行う機関がある場合にあっては、当該機関)の同意があること。
 三 予想される危険に対応して当該保護措置をできる限り円滑かつ安全に行うための部隊等と第一号に規定する当該外国の権限ある当局との間の連携及び協力が確保されると見込まれること。 (後略)」。

 つまり、在外邦人等の保護措置が可能なのは、「当該外国の権限ある当局者が現に公共の安全と秩序の維持に当たっており、かつ、戦闘行為が行われることがない」場合であって、内戦状態にある地域にいたり、ISのような武装組織に捕らわれている邦人を、自衛隊が救出に向かうことはできない。記事ではこの点に触れず「邦人救出訓練」とあるので、海外で何かあったら自衛隊が助けに来てくれるとの誤解を生む。
 また、「治安が悪化した国にある日本大使館が群集に包囲されているとの想定で」救出訓練を行ったとあるが、この想定は、上記一項に該当しないのではないか。つまり、このような場合「保護措置」は行えない可能性が高い。

 一方、「在外邦人等の保護措置」における武器使用については、第九十四条の五で以下の通り規定されている。
 「第八十四条の三第一項の規定により外国の領域において保護措置を行う職務に従事する自衛官は、同項第一号及び第二号のいずれにも該当する場合であって、その職務を行うに際し、自己若しくは当該保護措置の対象である邦人若しくはその他の保護対象者の生命若しくは身体の防護又はその職務を妨害する行為の排除のためやむを得ない必要があると認める相当の理由があるときは、その事態に応じて合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。ただし、刑法第三十六条又は第三十七条に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない」。

 要するに、正当防衛・緊急避難の場合以外には、危害射撃はできないということだ。記事では、自衛隊の武器使用が「正当防衛など自己保存型」に限定されていたのが、「武装集団などを排除する任務遂行型」も認められたと書いているが、依然として危害射撃は正当防衛・緊急避難に限定されている。
 「職務を妨害する行為の排除」のための武器使用とは、恐らく「警告射撃」までだ。記事にある通り、訓練でも警告射撃までしか行っていないはずである。非武装の群集なら警告射撃で排除できるかもしれないが、武装集団等が警告射撃で排除できるとは思えない。尤も、相手が撃ち返してくれば、正当防衛として危害射撃が可能になるが。

 また、記事では「中央即応集団は国際平和協力活動の専門部隊」とあるが、周知の通り中央即応集団隷下には、第1空挺団や第1ヘリコプター団、特殊作戦群などがあり、国際平和協力活動専門部隊ではない。専門と言えるのは国際活動教育隊だけだ。PKOや国際緊急援助活動などで先遣隊として派遣される中央即応聯隊も、決して国際平和協力活動の専門部隊ではない。
 さらに、記事に「中央即応集団の隊員」とあるが、これは間違いではないが不明確である。上記の通り中央即応集団には多数の部隊が所属しているのでこれではどの部隊か分からない。「中央即応聯隊の隊員」と明確に書くべきだろう。
 いずれにしても、海外で危地に陥った邦人を自衛隊が「救出」に行くことはない。海外に出かける人はこのことを肝に銘じてほしい。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
仏作って魂を入れず。
いつまで続くのかこんな茶番が
nanawanwan
2016/02/21 13:36
実際、厨国の昔で、官僚主義のコトバ遊びの果てに
国滅んでること、ごろごろあったような気がします。

ほんとにおかしい。

もともと俺なんかガンジー派くらいの感じなんですよ。
あまりにもおかしいんですよ。
上念さんとか稲田さんなんかもどっちかってーと
社会主義程度のキャラです。
ほんとにおかしいので、かなりふつうに保守に
追いやられているので、
健全な賢い保守になりたいものですね。
ただ、そういうヒトって、ある程度最低限アタマがあれば、
みんなそんなふうには追いやられてはいますね。
ばか地主息子みたいんじゃなく、
志願して政治家になるようなヒトで
けっこうそういうヒトも出て来てはいます。
なので、軍事的な見識の、センスの教育啓蒙は必要です。ほんとは一般大学でもやるべきです。
官僚主義で国滅び
2016/12/03 20:43

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