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zoom RSS 海自の機雷整備方針は誤り?

<<   作成日時 : 2016/02/18 21:04   >>

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「海自の機雷整備方針は誤り?」

 海上自衛隊の機雷整備方針が間違っているなどとは考えてもみなかった。軍事ライターの文谷数重氏が「軍事研究」3月号に寄稿している「中国海軍を封じ込める海上自衛隊の機雷」と題した記事を読むまでは。

 文谷氏は、記事の冒頭で次のように書いている。
 「日本は機雷の準備に熱心である。生産は1956年に再開され、生産規模も65年ごろには年間500個ほどに達した。質も時代につれて進展し、高性能化している。
 その整備は、最近では上昇・追尾機雷を指向している。これは深海底に敷設され、敵艦船を感知すると、上昇あるいは自走し敵艦船を攻撃するというものだ。ここ30年で開発された機雷は、ほぼこのタイプである。
 だが、この上昇・追尾機雷だけの整備は正しい選択なのだろうか?
 本来、これらの機雷はニッチ向けとされるものだ。特殊用途には合致するが、汎用性はない。大深度での対潜用に特化しているが、逆に言えばそれ以外には向かない。
 それに特化した機雷整備方針は誤りである。汎用品としての能力に欠けており、主力機雷に据えるものではない。
 この上昇・追尾機雷の重視は惰性に過ぎない。かつての冷戦期には好適な機雷であり、ソ連原潜やその太平洋進出を妨害する三海峡封鎖には向いていた。結果、開発整備の主軸となり、今に至ったものである。
 だが、すでに時代は変わっている。安全保障分野での仮想敵は中国やその海軍である。想定される戦場も東シナ海、南シナ海、太平洋、今後はおそらくインド洋と広範となり、敵地攻撃への流れからすれば、敵軍港や内水への機雷敷設も重視される時代となる。
 この状況で特殊用途に特化した機雷への傾斜は不適切だ。海自の機雷開発・整備方針については、従来の大深度・対潜用・通峡阻止の高性能機雷追及ではなく、浅海面・水上/対潜兼用・汎用の普及価格の機雷にシフトする必要がある」。
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 そうだったのか。目から鱗である。
 記事の要旨は以下の通り。
 ●海自の機雷は大別して14種類(推測含む)。繋維触発機雷が55式(K‐13)と66式(K‐15)の2種類。沈底感応機雷がMk25系(Mk25・Mk36)、Mk55系(Mk55・Mk52・)、Mk18系(67式機雷〈K‐16〉)の米式3種類と日本独自に設計・試作したMk55Bの計4種類。繋維感応機雷が71式(K‐5)、Mk57、83式の3種類。上昇/追尾機雷が80式、91式、K‐RX3(試作)、15式の4種類。自走式機雷がK‐RX2(試作)の1種類。
 ●海自の機雷保有数は少なくない。機雷は毎年調達されているが、消耗は殆どないため在庫が積み上がっていると考えられる。海自は弾薬庫の容量不足に悩んでおり、整備要求が常態化、大抵どこかしらで新造が始まっている。このことからも、機雷の在庫が少なくないことが窺える。
 ●純然たる国産開発機雷は、71式、80式、83式、91式、K‐RX3、15式、K‐RX2、対潜爆弾転用型の8種類。うち前6者が対潜用である。対潜戦重視は、大東亜戦争で米潜水艦に海上輸送を破壊された記憶があるからだ。
 ●冷戦下においても、ソ連潜水艦を封じ込めるため機雷には海峡封鎖能力が求められた。その結果、海自の機雷準備は対潜用かつ海峡封鎖に適した上昇・追尾機雷に傾倒した。だが、仮想敵が中共に変わった現在では、上昇・追尾機雷一辺倒の整備は正しくない。
 ●音響感応に依存する上昇・追尾機雷は、確実性に乏しい。機雷と目標との距離が離れているため磁気感応が使えないためだ。電磁気利用は動作環境が安定し、感応範囲と危害範囲がほぼ一致するため発火した時は確実に危害範囲に収められる。一方、音響等の圧力変動を利用する機雷は、音響の発生・伝播ともむらが大きいため確実性に欠け、感応範囲と危害範囲も一致しない。特に静粛化が進む中共潜水艦に効果が見込めるか疑わしい。
 ●上昇・追尾機雷は、攻勢的利用が難しい。上昇・追尾機雷は、容量が大きく機雷搭載数が制限される。1回の敵地侵入で少数の機雷しか敷設できない。また、炸薬量が少なく低威力である。対潜用なら問題にならないが、水上艦船に対する効果は、船体直下以外では疑問。さらに、大深度対応として作られており、浅海面に適したものではない。シナ沿岸は浅水深である。各軍港や海南島周辺、台湾海峡を含めて航路収束部に使いやすい機雷ではない。浅海面では、音響環境も悪化する。通常の音響機雷より巧緻繊細な感応機構を利用する上昇・追尾機雷にとって影響大である。
 ●上昇・追尾機雷は、高性能で高価であるため戦時の大量消費や補充に対応できない。仮想敵国が中共にシフトした結果、攻勢的機雷戦や対上陸戦、琉球列島封鎖といった潜在・顕在的な所要が生まれた。敵地攻撃的な港湾封鎖等を考慮すれば、1カ所に在来の感応機雷で500や1000個の機雷が必要になる。この点で、上昇・追尾機雷一辺倒は妥当ではない。
 ●上昇・追尾機雷は不要とは言えないが、優先順位は低い。優先すべきは、攻勢機雷戦用の航空機雷や潜水艦発射型の自走機雷の準備が必要である。今の日本にとって、多少高額でも高性能機雷として作ってよいのは、自走機雷だけだろう。
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 海上自衛隊が、上昇・追尾型機雷に傾倒していることや、敵港湾への攻撃と列島線での封じ込めという攻勢的機雷戦には、上昇・追尾型機雷は不向きであることを、記事を読んで初めて知った。
 対中戦を想定した場合、海軍根拠地に機雷を敷設する作戦は有効と考えられるが、航空機による敷設はリスクが高過ぎる。潜水艦で密かに敵港湾に近付き、敷設するしかないだろう。そのためには、文谷氏が指摘する通り、潜水艦発射型自走機雷の整備が必須となる。こんなことは、海自首脳部も分かっているはずと思うのだが、惰性で上昇・追尾型機雷を整備し続けているとしたら大問題だ。

 また文谷氏は、戦時になれば所要が急増するであろう高性能爆薬の確保を考える必要があると指摘し、肥料産業等で安価大量に作れる代用炸薬の検討も必要だろうと述べている。
 言われてみればその通りである。防衛省・自衛隊では、この点について何らかの対策を立てているのだろうか。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
汎用機雷で、消耗戦です。

本来、そういう装備です。
その上で、少数、高機能を混ぜてやれば、
けん制効果、敵の手間効果は莫大です。

あくまで、ローテク機雷が主役です。
俺もまったく同意、同じケツ論でした
2016/12/02 18:53
機雷は、安いのに、すごい効果上がってます。

ニホンのWW2対潜作戦で唯一効果、費用対効果上がったのには、機雷せき、くらいです。
B52の最大効率も実は統計的に言うと機雷散布。

ダニガン先生も機雷を愛する者は、次の時代の海洋戦の覇者になる、とまで言いました。

ヨーダと米は、あえてそこに着目されないようにしてるのでしょう。
あまりにも深刻なので、特大の報復処置で、抑止したいのでしょうね。

これは、しかも、ローテクでもハイテクでも効果大、なのです。
厨狂に諸葛孔明出て、これ使ってくると、
我が国の運命も、あやうくなってきます。
逆に言えば、劣勢でも、これでけっこう逆転しそうなんで、最後の大逆転手段として、ローテク機雷は大量にストックしたいです。
抑止力にもなると思います。
相手がばかだからだめかな?
歴史的に言うと
2017/01/07 23:19

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