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<<   作成日時 : 2017/04/15 20:49   >>

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「T‐4後継機に必要な機能」

 林富士夫・元空将が「軍事研究」5月号に「次世代のための米高等練習機『T‐X』」と題し、米空軍のT‐38練習機の後継機について考察した論文を寄稿している。
 それによると、T‐38は1959年に初飛行し、1961年から運用を開始。主として米空軍の航空教育・訓練軍団(AETC)で戦闘機/爆撃機パイロットの基本操縦課程とそれに続く戦闘機導入基礎課程(IFF)に使用されているという。
 しかし、運用開始から既に55年が経過し、近代化と延命措置が取られているが、このままでは2030年以降は運用できなくなるそうだ。
 また、T‐38は構造の老朽化だけでなく、能力においても大きな教育上のギャップを生じているという。T‐38では高Gでの定常旋回、先進システムの操作訓練、空中給油などの訓練ができないため、F‐22に選抜された学生は、F‐22に搭乗する前に複座型のF‐16Dで事前訓練を受けているとのことだ。

 そこで、昨年末、「米空軍次期高等練習機『T‐X』」の正式な提案要求(RFP)が発出された。
 T‐Xに対する要求の詳細には触れないが、米空軍が最重視しているのは、教育負担の低減のようだ。航空戦闘軍団(ACC)から、戦闘機による教育負担を減らしたいとの強い要望があったという。林空将は次のように述べている。
 [ランド研究所のレポート『将来の戦いの練習機に対する要求に与える影響を考える』は、「飛行教育課程を修了し、F‐15及びF‐16部隊に行く学生は、それぞれの複座型を使って高機動性航空機で最も危険なGLOC(Gの急激な立ち上がりによる失神状態)を教官同乗で教育できるが、F‐22やF‐35には複座型がないため、経験の浅い学生パイロットを最初からソロで高機動飛行させる危険性が懸念される」と指摘している。そこで学生をIFFからF‐22やF‐35に円滑に移行させるため、戦闘機に近い機動性を持つ練習機またはF‐16複座型を維持することが不可欠となる。]

 F‐16の複座型を維持し続けることが不経済なのは明らかだから、「戦闘機に近い機動性を持つ練習機」の導入となるわけだが、そこで注目されるのが「ETB機能」である。これについて林空将は次のように説明している。
 [Embedded Trainingとは実物の航空機(Live)のほかにヴァーチャル(Virtual:人間が操作するシミュレーター等)及びコンストラクティブ(Constructive:コンピュータが自律的に行動する)彼我航空機やウェポンをあたかも実目標の如く機上で表示し、予め設定したミッション・シナリオと戦闘環境において、学生パイロットにCCRM(Cockpit/Crew Resource Management)技術(利用可能な人、ウェポン、センサー、飛行計器、通信などのコックピットリソースを効果的に駆使してミッションを完遂する技術)を修得させる訓練機能をいう。耳慣れない概念であり、正式な和訳も存在しないので、本稿ではそのまま用語を使用し、簡略化のため以下「ETB」「ETB機能」または「ETB能力」と呼称する。また、Live、Virtual、Constructive目標をLVC目標と称する。
 航空機はETBを実現するため、次のとおり機上システム模擬(搭載される各種センサー、機器の模擬)ができること。
 ●レーダ・システム模擬でアクティブ電子走査(AESA)空対空レーダの機能・性能を模擬するとともに、性能は任意に変更してステルス機対処や電子環境を模擬できること。
 ●ウェポンは機関砲、短距離及び中距離空対空ミサイル、普通爆弾、慣性誘導ウェポン、レーザー誘導爆弾を模擬し、スコアリングもできること。
 ●ターゲッティングポッド模擬はFLIR、CCD‐TVカメラ、レーザーレンジファインダーを模擬し、僚機等と画像情報を共有できること。【到達目標】
 ●自己防御システム模擬(Defensive Management System:DMS)は模擬レーダ警報装置(RWR)と模擬チャフ・フレアディスペンサーで構成し、所要の表示及び警報を行ない、チャフ・フレアは飛行中に再充填ができること。
 ●2ウェイのデータリンクを装備し、100海里以上の見通し距離で地表から上昇限度までをカバーでき、多数機ミッションにおいてネットワークを構成し、お互いの位置情報を共有させるとともに、キル判定をリアルタイムで行なう。
 ●ミッション・シナリオは、飛行経路、搭載ウェポン、目標など訓練条件を定めるもので、飛行前に地上で作成するとともに、飛行中、前後席、他機(GBTSを含む)及びGSSからの変更が可能であること。ミッション・シナリオはデータ・トランスファー・デバイス(DTD)で機体にアップロードする。
 ●デブリーフィング用に単機から8機までの多数機ミッション(GBTS〈Ground-Based Training System〉を含む)データを240分(4時間)記録でき、書き換えも可能であること。
 ●ウェポンシステムトレーナー(WST)シミュレータと作戦フライトトレーナー(OFT)シミュレータで構成される地上訓練システム(GBTS)とデータリンクで連接し、リアルタイムでヴァーチャル目標等を機上に表示し、8機までの多数機ミッションが遂行できること。【到達目標】
 ●100海里以内の地上支援局(GSS)と同時3台まで連接し、飛行訓練のリアルタイムモニターを可能とする。【到達目標】
 ▽任務可動率80%以上で、ターンラウンドは45分以内に完了すること。]
画像

 また林空将は、T‐Xの要求にはいくつかの特徴と論点があるとし、特徴のひとつにETB機能を持つ総合訓練システムを挙げている。
 [特徴1:ETB機能を持つ空地一体の総合訓練システムである。
 T‐Xは一言でいえば、空飛ぶミッションシミュレータである。シミュレーション技術がいくら進歩しても埋められないギャップは実飛行の緊張感と体感であるが、T‐Xに要求されるETB機能はこのシミュレーションの弱点を補い、効果的・効率的に訓練を行なうものである。同種のシステムは既に9か国で運用中である。
 ETBにより訓練生は、存在しないレーダなどの模擬センサーからのLVC目標情報等をディスプレイ上に見てミッションを遂行する。実物を搭載すると高価なので、そのような方法をとる。このシステムを使えば、合理的と思われる如何なる状況も設定可能で、教官は学生が理解するまで何回でもリセットできる。臨場感も十分ある。イスラエル空軍のM‐346はエルビット社のEVA(Embedded Virtual Avionics)を搭載しており、地対空ミサイルの攻撃を受けると、スモークを曳きながら向ってくるミサイルの映像がHMDに投影されるという。
 このようなシステムの応用範囲は飛行教育のみならず、実戦部隊パイロットの練成訓練にも効果的であると考えられる。米空軍でもレッドフラッグ演習に2回参加できるパイロットは少なく、しかも演習では最新脅威の現示ができず、ELINT活動に対する保全の問題や、電子機器を実際に作動することができないなどの諸制約があり、実戦に即した訓練を行なうのが困難だからである。EBTがあれば、そのような制約なしに限りなく実戦に近い状況を作り出すことができる。]
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 航空自衛隊現用のT‐4練習機は、運用開始から30年近く経過し、そろそろ後継機の検討を開始する頃だと思うが、そのような話は聞こえてこない。T‐4後継機を自主開発するか、海外企業と共同開発するか、既存機を購入するか、はたまたT‐38後継機を導入するのか、現時点で予測するのは困難だが、いずれにしてもETB機能の付加は必須だと思われる。

 尚、T‐XのRFPに名乗りを挙げているのは、ボーイング/サーブ連合のBTX、ロッキード・マーチン/韓国航空宇宙産業連合のT‐50A、レオナルドのT‐100(M‐346)、シェラネバダ/トルコ航空宇宙産業連合のフリーダムトレーナー、テクストロン・エアランドのスコーピオン、Stavatti Aerospaceのジャベリンの6社、6機種である。
 林空将によると、T‐50Aが本命視されているという。また、レオナルドのT‐100のベースとなっているM‐346は、イスラエルの練習機選定でT‐50を破って採用されており、レオナルドが「空中ドーム」と称するETB能力を有し、イタリア空軍はETB機能を使った訓練を昨年開始し、イスラエル空軍でも運用実績を蓄積しつつあるという。
 最後に林空将は、「米空軍の選択はわが国のT‐4後継機にも大きな影響を与えるものと考えられ、今年1年はT‐Xから目が離せない」と指摘している。

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
複座ETB、実機シミュレーション拡張、最強っすね。
これはケチらず、主の言うように、ブラックアウト練習レベルの高性能機、入れるべきだと思います。

そういうのって、現実、いざとなれば戦時には、
副次的任務にも付けるでしょうし、それに投入できないくらい、長期戦時に、高等訓練続けるなら、
それは非常にけっこうなことであって。

ここは、質量とも、ケチるところでは無く、
大量養成態勢を作り、それに見合う、戦時予備役活用くらいの態勢も整えて良いと思います。
部隊内パイロット引退くらいかもしれませんが。
予備役パイロットに一線機は無理でも、それはそれで戦時、特に長期戦ともなれば、やってもらうことはいくらいでもありそうです。
そこ、重要視で良いと思います。
いずれにせよ、拡張増額は逃げられず、自然適正軍備までは上げるべきです。その場合、こういうジャンルを重視する編成とすべきです。

実機ETBってのは、すごいアイデアですね。
実戦部隊軍事革命初期達成できた時点で、
戦士は揃ってしまう、って意味になります。

正直、これは、すごい差が出ますよ。
なる
2017/04/16 14:19
複座
ETBシミュレーション拡張
機銃ポッド装備可能、ロケット弾ポッド、爆装可能、
軽爆撃機。

現レベル>GDP1.3%でx200>GDP2%でx300程度予定

重点強化種目
ある程度、高価格化覚悟した上でのx200そしてx300
Tゼロ
2017/04/21 04:00
X-2(ATD-X)をベースに開発したら、安くできないかしら
terak
2017/04/29 09:33

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