希典のひとりごとのブログ

アクセスカウンタ

zoom RSS 「防衛生産・技術基盤戦略」検証 A

<<   作成日時 : 2017/05/13 21:40   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 3 / トラックバック 0 / コメント 3

「『防衛生産・技術基盤戦略』検証 A」

 昨日の続き。

 吉岡秀之・元航空自衛隊補給本部長/空将は、防衛産業組織の在り方について次のように述べている。
 [戦略は、前述したように防衛産業組織を取り巻く環境が大きく変化したと分析。続いて、「国際競争力の強化や部門の統合等の産業組織再編・連携は有効な手段であると認めながらも、防衛産業組織の在り方については今後検討していく必要がある」と述べている。検討するのか、しないのか、歯切れが悪い。
 欧米では1990年代から2000年初頭にかけて防衛産業の再編がダイナミックに進み、今では、米国ではボーイング、ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマン、レイセオンなど、欧州ではEADS、BAEシステムズ、レオナルド(旧フィンメカニカ)などに集約されている。これら企業の資金力、営業力、技術力及び製造能力は他国の企業(中露を除く)と比べて格段に大きい。
 我が国では、大手企業といっても防衛専門の企業はない。大手企業の防衛部門の売上げは会社売上げの概ね10%以下である。通信電子分野を例にとると、情報通信事業では日本電気(NEC)、富士通、東芝、日立製作所の4社、センサー事業では三菱電機、東芝、NEC、日本無線(JRC)の4社、ソナー事業では沖電気工業(OKI)、日立製作所の2社が張り合っている。このため、これらの会社は一般競争入札案件において受注を優先するあまり、赤字覚悟で入札することもあると聞く。赤字が続けば、企業はやせ細っていくだけでなく、企業トップが防衛事業に意欲を失い、研究開発等への投資を抑制することになる。実際、そういう事態が起きているという話も聞かれる。
 航空機、誘導武器、弾火薬類などの分野でも通信電子分野と同様に複数の企業が存在している。これまでの経緯から、各企業が扱う品目は一応の棲み分けがされているため、企業は限られた国内調達額のうち、さらに小さいパイを食って命を長らえているという状態である。そのパイ(国内調達額)であるが、パイを小さくするFMS調達額は平成20年代前半まで500〜1000億円であった。しかし、平成27年度になると、FMS調達の計画額は約4700億円に増加し、パイはそのしわ寄せを受けて3割減になっているという。この状態を放置しておくと、防衛産業の弱体化が一層進行するのは間違いない。
 防衛省は、防衛産業組織の在り方を速やかに検討し、所要の手を打つべきである。防衛事業に関心がない企業トップには、部門を手放すように勧告することも選択肢とすべきである。そして、防衛産業の維持・強化を図って欲しい。]

 戦後、工廠が廃止された我が国では、民間防衛産業がなくては、自衛隊の装備品の開発、製造、修理、維持、管理等ができなくなる。防衛産業の危機は、自衛隊の危機であり、国防の危機だ。早急に大手防衛関連企業の防衛部門を統合・再編する必要があるが、企業任せではことは進まない。政府主導で、半官半民の防衛装備品開発・製造会社(整備・販売部門含む)を設立し、そこに各企業の防衛部門を集約すべきである。
 F‐35A戦闘機の導入等で今後、FMS調達額が増えるのが確実で、「この状態を放置しておくと、防衛産業の弱体化が一層進行するのは間違いない」のはその通りだが、戦闘機戦力等の増強が急がれる状況では、これも致し方がない。
 ただ、この状態を放置しておいてよいわけはなく、パイを大きくする上で目玉となるF‐2後継機の国内開発、又は国際共同開発を確実に推進する態勢を作るためにも、防衛関連企業の防衛部門の統合・再編を行なうべきだ。
画像

 装備品分野の現状及び今後目指す方向性については、戦車・火砲、輸送機・救難飛行艇等、弾火薬関連分野について次のように指摘している。
 「戦車や火砲の方向性については、「戦略」は「世界的に高い水準にある強みをいかし、適切な水準の生産・技術基盤の維持に努める」としている」が、25大綱別表注釈で示された戦車・火砲の規模、各々300両・300両/門という僅かな量では、生産・技術基盤の維持は無理ではないかとの懸念を示している。

 また「戦略」は、「輸送機・救難飛行艇等については、『民間転用や諸外国との防衛装備・技術協力の可能性など開発成果の多面的な活用を推進する』としている」が、特に民間転用については2つの問題が存在するとして、@自衛隊機と民間機は開発・製造並びに飛行段階において適用される規則が異なること、A初度費(装備品を製造するための専用治工具関連の経費で国が負担)と図面の所有権の問題―を挙げている。
 @については、海外に自衛隊機を民間機として輸出する場合は、当該国の型式証明(米国ではFAA,欧州ではEASAが定めた基準)を取得しなければならないが、我が国の取り組みは遅れている指摘。
 Aの初度費については、財務当局は民間転用機にも応分の経費を割りかけるべきとの意見があるようだが、割りかけには慎重を要すと指摘。また、図面の所有権は防衛省にあるが、所要の条件をクリアした企業には原則無償で使用を許可することを提案している。

 「戦略」は、「弾火薬は継戦能力の基本。今後も効率的な取得との両立を図り、国内企業化からの一定規模の調達を継続することを可能にする」としている。だが、「防衛省全体の弾薬購入費(誘導弾含む)は平成24年度に約1200億円であったが、その後、減少傾向にある。このため、業界は受注が減少して、完全な諦めムードになっていると聞く。全く憂慮すべき事態である」と指摘している。
 その原因については、次のように推測している。「弾火薬の契約が減っているのは、射撃訓練等による弾薬の射耗が計画どおりに進まないことが大きな要因と思っている。弾薬の調達は射耗や用途廃止等によって基準を下回った分量を買い足す方法をとっているため、計画した弾薬数が射耗できないと当然調達量は減る。また当該年度の射耗計画数は前年実績に影響されるため、前年並みか、それ以下に抑えられる可能性が高い」。

 吉岡空将は、「自衛隊が保有している弾火薬の保有基準が厳しい安全保障環境や想定される作戦行動等に適合したものなのか、検証することを提案する。いくら最新鋭の装備品を揃えたとしても、弾火薬がなければ戦いにはならない。弾火薬は継戦能力の確保のためには不可欠である」と指摘している。
 全くその通りだが、どうやら防衛省には、継戦能力アップのために弾火薬(ミサイル含む)の備蓄を増やす、という考えはないようだ。
画像

 装備品等の輸出については次のように述べている。
 [本件は戦略には記述されていない。前述したように、装備品及び部品等の輸出は中長期的に見て、防衛産業を活性化するのに有望と考えられる。制度作りと体制強化を速やかに図り、移転を振興するように期待する。制度は、輸出があくまで我が国の安全保障に資することを目的として、日本版FMS、教育・訓練に関する規則及び維持・整備支援の規則などを制定する。また、企業が不要な損害を被らないように貿易保険なども見直すべきであろう。体制は、防衛装備庁が窓口となって外務省、経済産業省等が一元的に短時間で処理できる組織を整備すべきと考える。
 なお、我が国では、一般輸入品の導入に際しては通常、商社が介在するが、外国では商社が関係することはないという。商社の強みは相手国の商習慣に詳しく、販売活動に慣れていることである。米国や仏国等では、装備品の売り込みに際して、メーカーの従業員が政府の一員として販売活動に参加することもあるという。防衛装備庁も、商社員等を期限付き職員として活用する制度を設けて、装備品等の輸出を官民一体で当たるようにしてはどうだろうか。餅屋は餅屋であり、動きがアクティブになるのは間違いない。]

 商社は儲けにならなければやらない。防衛装備庁への出向も自社の得にならなければやらないはずだ。
 「軍事研究」6月号に、UAEで開かれた防衛・セキュリティ関連装備展「IDEX2017」を取材した竹内修氏の記事「中国、過去最大大物装備を出展」が載っている。それによると、同展には日本から川崎重工業、NEC、NTTデータが出展、川崎は空対空用小型標的の模型と画像式地雷探知機、NECは浄水装置の模型や見通し線外通信システム、NTTデータはセキュリティ関連システムなどを展示していたという。
 竹内氏は「防衛装備移転三原則の制約の中で輸出が可能で、かつ他国との競争力を確保できそうな製品をチョイスして、世界市場に挑む姿勢を示したことは、大きな意味を持つといえるだろう」と述べている。
 なるほど、取り組みの方向性としてはよいのではないか。ニッチな装備品でも、輸出が成功すれば商社の食指が動くだろう。そうなれば、装備品の輸出(移転)が活発になるかもしれない。

 明日に続く。

月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 3
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
難しいですね。

A、GDP2%
B、弾薬ストックと実弾演習の拡大

他に、根本的打開策も必要な気がします。

C、極東海洋連合に供給するための
米日共同企業体などの編成
D、日英豪NZシンガポールなどに提供する
強力米以外サブシステム連携

日英連携で打開すべきかもしれません。
米もサブシステムと副都方式の方が、究極には海洋帝国的意味では利益でしょう。
米で全世界抑えるのは、不可能です。もってせいぜい200年。本土米だって危ないですよ。
それがわからぬジェダイでは無いはず。

そこにこちらが気付けば打開策はあるはずです。
さもなくば、世界の歴史も悪い方向のメインシナリオになってしまいます。
打開策
2017/05/14 21:43
やはり、次期F3の日英提携になると思います。

そろそろ目玉が必要です。
じり貧になりそうです。

せっかく、ニホンならではの良い装備体系ができそうな気配があるので、もったいないです。
海洋連合自体の立体化、って意味でも。

次期F3日英連携、
その先に、将来の戦車、哨戒爆の共有化も見えて来ると思います。
英国も、ほぼニホンと同じ地勢なので、
哨戒爆と戦車がニホン型である理由はあると思います。
英国の戦車は歴史的に重すぎです。
英国の良さが出無い装備と見ます。

あと、MCV改を世界的に売るか?ですね。
売れる態勢にはなかなか無い気もしますが。
目玉
2017/05/14 21:50
A、100年200年後には、たとえば、ヒスパニック系の侵食で米国自体が変質し、非海洋勢力により陥落する可能性もある。

B、その場合、一時的に陥落しても、他勢力、日英豪などにより奪還もしくは救援し、海洋帝国のメインボディーとした方が良い。

C、イメージ的には、東ローマ帝国が西ローマ帝国を救援して存続復活変質させるようなイメージ。

ありうるし、可能だと俺は思う。
できなければ、世界的人類滅亡の可能性は増すとも思う。
1000年後には無理かもしれぬが、そのような経験が良い方向に柔軟な連合構成へと影響し、
人類の破滅も、1万年くらい延ばせるかもしれない。

ジェダイはおそらくそういうことを考えており、
ならば、そういう実現、ニホンの一翼をリードする存在へとなることも可能と見る。
と言うか、多極で連合して穏当な世界コントロールへシフトした方が良い。
米国の一時的陥落
2017/05/14 21:55

コメントする help

ニックネーム
本 文
「防衛生産・技術基盤戦略」検証 A 希典のひとりごとのブログ/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる