海自が大型艦を欲しがる理由

「海自が大型艦を欲しがる理由」

 海上自衛隊の護衛艦は、一貫して大型化の道を歩んでいる。
 初のシステム艦である「はつゆき」級(DD)以降を見ても、「はつゆき」級:満載排水量4000トン(やまゆき以降4200トン)、全長130m、幅13.6m。「あさぎり」級:満載排水量4900トン(はまぎり以降4950トン)、全長137m、幅14.6m。「むらさめ」級:満載排水量6200トン、全長151m、幅17.4m。「たかなみ」級:満載排水量6300トン、全長151m、幅17.4m。「あきづき」級:満載排水量6800トン、全長151m、幅18.3m。
 ミサイル護衛艦(DDG)も「たちかぜ」級:満載排水量5200トン、全長143m、幅14.3m。「はたかぜ」級:満載排水量5900トン(しまかぜ5950トン)全長150m、幅16.4m。「こんごう」級:満載排水量9500トン、全長161m、幅21m。「あたご」級:満載排水量10000トン、全長165m、幅21m。
 高性能だが重量も重いイージス・システムを搭載する「こんごう」級以降のイージス艦を、それ以前のミサイル護衛艦と同列には扱えないので、イージス艦が大きくなるのは仕方がないだろう。
 ただ、ヘリコプター搭載型護衛艦(DDH)については、「「はるな」及び「しらね」クラスと「ひゅうが」級を同一艦種と看做すことは到底できない。「ひゅうが」級(現在公試中の「いずも」級も)は、立派なヘリコプター空母だ。「はるな」級が高性能化、大型化したものとは違う。
 因みに、「はるな」級:満載排水量6850トン(ひえい6950トン)、全長159m、幅17.5m。「しらね」級:満載排水量7200トン、全長159m、幅17.5m。「ひゅうが」級:満載排水量19000トン、全長197m、幅33m。
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 海自が「ひゅうが」級をDDH(駆逐艦)と言い張っているのは、まだ良いとしても、「はるな」級の後継艦として、対潜ヘリの母艦として使うには明らかにオーバースペックだ。この点を考慮したのか、次の「いずも」級では車輌等の搭載や補給も行えるようになり、多目的艦の要素も備えているようだが、それにしても大き過ぎる。将来、F-35Bを搭載できるように改装して、軽空母として用いる構想があるのかもしれないが、そのためには“予算”という大きな壁が立ちはだかる。
 高性能なフネが欲しいとの気持ちは分かるが、大きくすれば良いというものでもあるまい。海自が見栄えの良い、大きなフネを欲しがるのは、他人(米海軍)が持っているものを欲しがる、子供じみた「欲しい欲しい病」ではないのか。
 と、思っていた。ところが最近、大きな事実を見落としていたことに気が付いた。

 「軍事研究」12月号の江口博保元陸将の論文「美辞麗句『統合機動防衛力』構想 防衛計画の大綱への提言・苦言」の中で、江口陸将は、「防衛計画の大綱」の別表について次のように述べている。
 「大綱の別表には隊員数や主要部隊数や主要装備の数が規定されており、これをはみ出すことはできない。(中略)
 装備の開発を決めるには10年先を見通す必要があるが、10年先を見通して装備の数量まで限定する必要があるのか疑問に思う。例えば海上自衛隊の護衛艦の隻数をなぜ規定するのか、制約を課すのならばトン数で規定すれば柔軟な艦種の選定が可能になる」。

 また江口陸将は、海自の護衛艦の構成が他の主要国と異なると指摘。イギリス海軍やフランス海軍は巡洋艦や駆逐艦のような大型艦よりフリゲートやコルベットの小型艦の保有数のほうが多いのに、海自は世界の海に展開している米海軍並みに大型艦の比率が高いことについて、以下のように述べている。
 「何故アメリカ型の艦艇保有になるのかその真意は分からないが、考えられる一つの理由は『大綱別表』で艦艇数が縛られているから、それならば少しでも大型で高性能の艦を保有したいと思うのは当然である」。

 なるほど、言われてみればその通りだ。うかつにも「大綱別表」のことに思い至らなかった。そういう理由なら、海自が「はるな」級の替わりに遥かに大型の「ひゅうが」級を求めるのも分からなくはない。
 とはいえ、限られた予算の中で高価な大型艦を揃えるとなると、他の装備品に皺寄せがいく。その代表が哨戒ヘリコプターだ。14機ものヘリコプターを搭載できる「いずも」を造ったのはよいが、これに載せるヘリコプターを調達する予算がない(常時載せることができるのは、たぶん3機程度ではないか)。「いずも」級はヘリコプターの運用に特化するとのことだが、これでは本末転倒ではないか。
 そもそも、“予算”という大きな縛りがあるのに、わざわざ「別表」で、主要部隊や主要装備品の数を細かく規定する必要はないと思う。どうしても規定するというなら、江口陸将がいうように、海自の場合は「トン数」で規定すべきだろう。

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この記事へのコメント

いや、違います
2016年12月08日 01:13
当たってますが、違います。

大型化しても、ぜんぜん輸送力足らないんですよ。
それこそ、主の中東派遣軍団にらんでるんじゃ?

いやあ、現代戦、機械化戦ってすごく物量食いますね。
旧ニホン軍とは大違いなんです。

その意味じゃ、みなさん、旧軍志向なのにパンツァー厨でなのにトラックマニアじゃ無い。
分裂してますよ。
ソ連は戦車よりトラックよこせ、って言ってました。
100%本気だったんですね。まずは、そこから、考えましょうね。

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