E-2Dが選ばれた理由

「E-2Dが選ばれた理由」

 先頃、ノースロップ・グラマン社のE-2Dが航空自衛隊の早期警戒(管制)機に選定されたが、石川潤一氏が「軍事研究」1月号に「輸入決定!E-2D早期警戒機」と題して、同機が選ばれた理由について書いている。
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 石川氏は、「評価の詳細については明らかではない」としながらも、「飛行性能やキャビンの快適性に勝る737AEW&Cに対して、E-2Dアドバンスドホークアイは航空自衛隊が13機運用しているE-2Cホークアイのインフラや訓練体系などをそのまま流用できることや価格の安さなどが経費、後方支援に関する評価で高得点を得たことは間違いない」と述べている。
 また、同機が配備される予定の那覇基地に、「ボーイング737を4機収容できる格納庫を建設する余地はない」とも指摘している。

 しかし、これ以上に決め手となったのは、E-2Dのレーダーの性能と、ネットワークの中核として運用できる能力にあったようだ。石川氏は次のように述べている。
 「早期警戒(管制)機にとって生命線のレーダーは、対ステルス性に優れたUHF波長のAESA(アクティブ電子スキャンドアレイ)レーダー、ロッキード・マーチンAPY-9が優っている。対する737AEW&Cのノースロップ・グラマンMESAレーダーはすでに開発を終了しており、ノースロップ・グラマン社内にも『博物館もの』という声があるのも事実だ。性能的にも、アンテナの形状から前後方と側方で探知距離に差があるMESAレーダーは回転式のロトドームと違って制約が多い。探知距離の点でも、E-2Dは優れているというデータがある。
 早期警戒機の探知距離は飛行高度で決まるが、レーダーやアンテナの性能も重要で、高く飛べばいいというものではない。ワシントンDCにある研究所『ザ・ワシントン・セキュリティ・フォーラム』は『Pacific Security and the E-2D』という報告書を提出、その中で両レーダーが航空機およびフリゲイトを探知できる距離をMESAが370km/240km、APY-9が555km/350kmと記述している。E-2Dに関する報告書なので多少は割引して見る必要があるとは思うが、この数字の差には驚かされた。 (中略)
 しかも、E-2Dは米海軍が今後10年以上かけて合わせて75機を導入する計画で、その過程で段階的にアップデートが図られていく利点がある」。

 また、ネットワークの中核として運用できる能力については、以下のように述べている。
 「米海軍ではNIFC-CA(海軍統合火器管制・対空、ニカフ)という構想を進めており、水平線の向こうにある目標をEOR(リモート交戦)により迎撃する能力のことだ。
 海軍ではE-2DをNIFC-CAの中心に据え、イージス艦から発射されるミサイルや空母に搭載されるF-35CやF/A-18E/Fスーパーホーネット戦闘攻撃機、EA-18Gグラウラー電子攻撃機、UCLASS(無人空母発艦空中監視攻撃)システムなどを組み合わせる形でネットワークを構築する。ネットワーク構築には目標データを高速かつ大量にやり取りできる能力が必要で、現在主流となっている衛星を介したリンク16戦術データリンクではとても充分とは言えない。
 そこで、現在のNIFC-CAで使われているデータリンクはLOS(見通し線)によるCEC(共同交戦力)システムで、その中継機としてE-2Cホークアイ2000が使われている。ホークアイ2000やE-2Dが搭載しているのはUSG-3 CES(CECイクイップメントセット)で、以前は『共同交戦送信処理セット』という長い名前で呼ばれていたが、現在はCESで統一された。USG-3は胴体の下に大きなアンテナが搭載されているが、その位置からも分かるように衛星通信を使わないLOSによるデータリンクで、艦艇側にはUSG-2と呼ばれるCESが搭載されている。 (後略)」。

 「NIFC-CAという名称から、航空自衛隊の警戒管制任務とかけ離れた構想にも思えるが、NIFC-CAはイージス艦からリモートで艦隊空ミサイルを発射、航空機や巡航ミサイルに対処するだけではない。実はNIFC-CAには三種類あって、それぞれのSoS(システム・オブ・システムズ)は『キルチェーン』と呼ばれる。NIFC-CA FTS(フロム・ザ・シー)、NIFC-CA FTA(フロム・ジ・エア)、NIFC-CA FTL(フロム・ザ・ランド)で、各キルチェーンは目標の探知を行う『リモートセンサー』、攻撃兵器の火器管制を行う『ウエポンコントロールシステム』、両者を結ぶ『センサーネットワーク』、そして『ミサイル』からなっている。 (後略)」。

 ただし、空自のE-2DがCECを搭載すると決まっているわけではない。この点について石川氏は次のように述べている。
 「航空自衛隊が今回採用を決めたE-2Dをどのように運用するかはまだ分かっておらず、CECの搭載についても公式な発表はない。しかし、CECを搭載したとしても、海上自衛隊や米海軍との統合運用をしないのならば意味はないし、そのためには三自衛隊の垣根を越えなければならないことも多いだろう。また、TTNT(戦術ターゲティング・ネットワーク技術)のような次世代データリンクが搭載されることになれば、策源地攻撃など、より積極的な航空作戦も可能になるはずで、E-2Dが日本の防衛を大きく変える可能性もある」。

 以上のように「伸びしろのある」E-2Dを選定したことは極めて妥当な判断だったと言える。

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