不可解な泉・元東部方面総監の情報漏洩事件

「不可解な泉・元東部方面総監の情報漏洩事件」

 それにしても不可解なのは、泉一成・元東部方面総監らが係わった情報漏洩事件の顛末だ。結局、起訴猶予になったとはいうものの、現職と元職の陸将が書類送検されるという自衛隊始まって以来の大不祥事である。しかも、自衛官なら誰でも入手可能な「教範」を、ロシアのGRU(参謀本部情報総局)所属の駐在武官に渡したという実にショボイ容疑でである。泉・元陸将の動機を含め、起訴猶予になったからそれでお仕舞いとはいかないモヤモヤしたものが残る。
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 この件について、「軍事研究」2月号の「市ヶ谷レーダーサイト」で、北郷源太郎氏が以下の見解を述べている。
 「所謂『情報漏洩事件』泉一成の功罪
 ▼師走の市ヶ谷に衝撃が走った。陸自の元方面総監がロシアの元駐在武官に対して情報漏洩したという疑いで、公安によって強制捜査を受け書類送検されたというニュースである。元方面総監は泉一成(元東方総監・18期)で、ロシア軍駐在武官はGRU所属のコワリョフ大佐である。結果的には情報漏洩と言っても教範を渡しただけ。秘密情報を含んでいないことで不起訴になったが、教範を泉に渡した元部下の渡部博幸(富士学校長・国学院大28期相当)ら現職自衛官も書類送検され更迭された。渡部は泉が東方総監の時に東方防衛部長として仕えていた。元方面総監という極めてランクの高い将官が捜査対象になり、また現職の将官にまで処分が及んだという意味では戦後最大級の事件ということもできる。
 ▼この事件の表面上の不可解さと、そこから見えてくる本質的な問題点について考えてみたい。まず最大の違和感は、よりにもよってあの泉陸将が引っ掛かったという点である。泉陸将は常在戦場を体現し、市ヶ谷勤務でも常に迷彩戦闘服とコンバットブーツを着用し、部隊では指揮杖を携行する『軍人』として有名で、愛国心と臨戦モードでは先頭を切る人物だ。そのような人物がやすやすとスパイの手玉に取られたというのだろうか?次に不思議なのは、教範などは隊員ならば誰でも購入することができるものだ。それに嘆かわしいことであるが、古本屋やネットオークションにも出回っているそうである。あえて方面総監から入手する必要はない。それまで築いてきた人間関係を犠牲にしてまで、このような入手方法をとる必要があったのあろうか?
 ▼今回のことは分からないが、実はインテリジェンスの世界ではギブ・アンド・テイクが常識だ。外国のスパイ事件の場合は金に目が眩んだ犯行や主義者による確信犯という場合が目立つのだが、このようなケースは国家反逆行為であるから大々的に暴露され露見されるのである。ギブとテイクのバランスがとれている場合は通常の諜報活動なのであって、どの国にとっても違法ではなく、露見されることもないのである。では、これまで断続的に発生してきた俗にいう自衛隊スパイ事件はどうかというと、時としてギブの方が大幅に超過してしまうミスがあったかもしれないが、概ね普通の国では通常の諜報活動と認められるギブ・アンド・テイクの場合が殆どである。報道もされず政府が公式に認めることはないが、一方的に外国に情報が流れている訳ではなく、日本側も情報を得ているのは言うまでもない。通常の情報収集をしている自衛官や元自衛官が警察に逮捕されたりすることが、この国の異常さを物語っているということに国民は気付くべきであろう。
 ▼ではなぜ秘でない教範を敢えて方面総監にねだるのか?教範などは最初の糸口に過ぎない。セールスの常套手段であるフット・イン・ザ・ドアと同じで、コワリョフ大佐は将来的に要求を大きくしていき最終的には年度防衛計画のような大物を釣ることを考えていたのであろう。詳細は分からないが、通常の諜報活動を行っていた泉が不幸にして公安の網に掛ってしまったというのが真相に違いない。
 ▼この事件から得られる真の教訓は、自衛隊は上から下まで情報管理が甘いとか、自衛隊と警察の確執が深いというものではない。確かに自衛隊員は情報の取り扱いに慣れてないことはあるのだが、これは我が国の諜報リテラシーのレベルの問題なのであって個々の自衛隊員のせいにするのは余りにも酷というものだ。またこの事件は警察による無意味な自衛隊ハラスメントだと主張する向きもあるが、それも見当違いというもので、部内限定のルールがある以上は守らなければならない。ロシア人に見せて良いような文書であれば一般国民に広く開示するのが筋だろう。
 ▼今回の事件で得られる真の教訓は、自衛隊が軍隊ではないという一言に尽きるのだ。自衛隊は国内法に縛られるのに対し、軍隊というものは国内法の埒外に置かれるべきものなのだ。安保法制を整えて自衛隊がいくら軍隊のふりをしても憲法改正をしない限りは100%の軍隊にはなれないのだということを今回の事件は剔抉したのだ。その意味では反面的になるが、泉の功績は大であったといっても良い。しかし人として部下に迷惑を掛けたことの責めは負わねばならないだろう」。

 泉・元陸将が「通常の諜報活動を行っていた」との見方には驚いた。果たして、退職した元総監・陸将が諜報活動を行うなどということがあるのだろうか。到底信じられないのだが。
 それとも自衛隊では普通のことなのだろうか。だとするなら、公安と連絡調整していないというのは間抜けな話だ。「自衛隊が軍隊ではない」からという問題ではない。たとえ自衛隊の諜報活動に法的な裏付けがないとしても、内々で公安と調整するのは可能なはずだ。

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この記事へのコメント

GI
2020年09月17日 22:48
公安にはめられたんでしょう。それが真相だ。

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