9個師団+6個旅団体制の見直しが必要

「9個師団+6個旅団体制の見直しが必要」

 4月11日付のブログで取り上げたが、江口博保・元陸将が「軍事研究」5月号に「水陸機動団創設への提言(その1) 役に立たない普通科連隊だけの水陸機動団 『水陸機動旅団』三個を構築せよ!」と題した記事を寄せている。その中で江口陸将は、島嶼防衛のために3個水陸機動旅団の創設と、大隊規模の部隊の洋上待機を提言している。
 そして、同誌6月号では、「水陸機動旅団創設への提言(その2) 水陸両用作戦を成功させるためのノウハウ 島嶼防衛『統合任務部隊』の中核『水陸機動師団』」と題し、水陸機動師団の創設とそれに係わる人員の確保方法、及び水陸両用作戦を遂行するための統合任務部隊の編成並びに輸送統制組織の創設などについて論じている。
 記事の中で気になったのは、水陸機動師団(3個水陸機動旅団+直轄部隊:人員約1万人)を創設するために必要な人員を確保する方法を論じている部分だ。江口陸将は、陸上自衛隊の9個師団+6個旅団=15個作戦基本部隊体制を見直すことで、必要な人員を確保することを求めている。具体的には以下の通りだ。

 「新大綱には『安全保障環境に即した部隊配置と部隊の機動展開を含む対処態勢の構築を迅速に行なうことにより、我が国の防衛意思と高い能力を示し、事態の深刻化を防止する』と、理想的な安全保障論が展開されている。
 これに応えるには、水陸機動師団(仮称)に加えて、空中強襲師団の編成という2個の強力な緊急展開部隊を創設することにより、即応性を飛躍的に高める一方で、作戦基本部隊の数を削減してでも、機動運用と称される部隊の充実を図る必要があると思われる。(中略)
 表‐1は改編構想の一案である。北は第7師団を機甲旅団に縮小・改編し、東北は現状維持とし、北関東の第12旅団を本格的な空中強襲旅団に改編して、さらに空挺団とヘリ団をそれぞれ増強した空挺旅団と飛行旅団の3個旅団から成る空中強襲師団を新改編する。
 中部地方の1個師団を廃し、中国・四国の第13・14旅団を廃して師団を復活する。
 相浦の方面普通科連隊を基幹とする水陸機動部隊を練成・増強し、南九州の第8師団を改編して沖縄の第15旅団と併せて3個の水陸機動旅団及び直轄部隊から成る水陸機動師団に改編して、南西諸島を含む南九州に配置する。
 この結果、師団数は9個と変わらない。旅団数は独立旅団3個と水陸機動師団・空中強襲師団内の各3個旅団と併せて9個旅団になり、増えたように見えるが、在来の空挺団とヘリ団が母体であるから、純増は1個旅団である。作戦基本部隊数としては3個旅団減である。
 北部方面隊は機甲師団が旅団に格下げとなるが、東北方面隊の2個師団は北にも西にも転用可能とし、東部方面隊は形の上では旅団が師団に増強されるが、空中強襲師団は南西にも北にも即応する部隊である。中部は2個旅団が欠となるが西部方面隊の後方を支え、西部方面隊は1個旅団欠になるが南西諸島に対する防衛が強化される態勢が整う。
 海・空機動力に優れた即応2個師団、機動運用にも要域防衛にも任じ得る多用途の5個師団・3個旅団(機甲含む)及び政経の中枢である首都圏と関西地区の防衛を主とする2個師団という構えは、抑止効果が大きいのではないだろうか」。
 【表‐1 現状と改編構想の対比】
 〈方面隊〉    〈現状〉       〈改編構想〉
 北部方面隊  第2師団      第2師団
           第7師団(機甲)  第7旅団(機甲)
           第5旅団      第5旅団
           第11旅団     第11旅団
 東北方面隊  第6師団      第6師団
           第9師団      第9師団
 東部方面隊  第1師団      第1師団
           第12旅団     第12師団(空中強襲)
 中部方面隊  第3師団      第3師団
           第10師団
           第13旅団     第13師団
           第14旅団
 西部方面隊  第4師団      第4師団
           第8師団      第8師団(水陸機動)
           第15旅団
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 江口陸将のアイデアは、斬新で興味深いが、4月11日付のブログで指摘した通り、3個水陸機動旅団からなる水陸機動師団を創設し、その一部を洋上待機させるという案は、水陸機動師団や大型揚陸艦等の整備に経費がかかり過ぎ、実現性に乏しい上に抑止効果も低いと思われる。それより、先島諸島の飛行場を有する島に守備隊を置くほうが現実的だろう。また、空中強襲師団の創設も、大金がかかりそうだ。

 ただ、水陸機動師団や空中強襲師団は創設しないにしても、現在の9個師団+6個旅団体制の見直しは必要ではないだろうか。江口陸将は、「このまま『15個作戦基本部隊体制』にこだわり続ければ、既存の作戦基本部隊はますますやせ細って行くように感じられ、寒心に堪えない」と憂慮している。全く同感だ。
 例えば、第2、8師団以外はすべて旅団化する(第7旅団は機甲、第12旅団は空中機動とする)。ただし、陸上自衛隊の定員は減らさない。15個作戦基本部隊も減らさない。作戦基本部隊が「やせ細る」のを防ぐのである。
 師団の定員は1万人、旅団の定員は4000人とする(15個作戦基本部隊で7万2千人。現在は8万3千人ほどと推測される)。余った人員で師団や旅団、聯隊等の定員を充足させる。また、後方部隊も充実させる。
 師団は3個普通科聯隊、1個特科聯隊、1個戦車大隊を基幹とする。旅団(第7、12旅団除く)は3個普通科大隊(1個大隊=約600人)、1個特科大隊(榴弾砲15門)、1個戦車中隊(戦車14両)を基幹とする。第1空挺団、第1ヘリコプター団、水陸機動団などは陸上総隊司令官の直轄とする。
画像

 また江口陸将は、「新中期防では戦車部隊は北と南の部隊だけに集中し、特科(砲兵)部隊は方面隊直轄にするとのことであるから、戦車部隊や特科部隊を保有しない師団や旅団が出現することになる。戦車と火砲部隊を欠いた師団・旅団は諸職種連合部隊とは言えないだろう。旅団はともかくとして、師団と呼称できるのか疑わしい部隊を作戦基本部隊と称するのは甚だ疑問である」と指摘している。全くその通りである。
 江口陸将は、暫定的な対策案として、300両の戦車と300門の火砲(榴弾砲)を作戦基本部隊に薄く配備することを提案しているが、やはり、作戦基本部隊に必要な量の戦車と火砲を確保すべきである。
 戦車は、師団の戦車大隊に44両、旅団(第7、12旅団除く)の戦車中隊に14両を配備する。空中機動旅団である第12旅団には現在と同様配備しない。第7旅団は、戦車3個大隊(戦車44両×3=132両)と偵察隊に10両で合計142両配備する。総計384両となり、「防衛計画の大綱」の別表の欄外に示された約300両を超えるので、大綱の戦車定数を見直す。機動戦闘車の調達を打ち切れば予算は確保できる。
 火砲(榴弾砲)は、師団の特科聯隊に45門(1個大隊15門×3)、旅団の特科大隊に15門(1個中隊5門×3)を配備する。合計で285門となる。第7旅団の特科大隊は6個中隊、99式自走榴弾砲30門としても良いだろう。さらに、水陸機動旅団にも1個特科大隊を配備するとすれば総計で315門となる。これで戦車や榴弾砲のない師団や旅団はなくなる。

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この記事へのコメント

やはり兵站軽視
2016年11月30日 03:48
根本的に基本から考え直さないと無理な気がします。

兵站を大増強したとしても、現代戦ではそれほどの
単位、動きません。

地勢を考えて、軽歩兵中心で兵站大増強するか、

新案だと、基本張り付け中間的部隊なままです。
重装備でもない軽装備でもない、中間的な張り付け部隊

戦車動かすのに機動するのに、すごくトレーラーが必要です。

たしか、独軍は現在、10万人で、機甲師団x1
装甲てき弾兵師団x2 これくらいが基幹だったかな?
くらい。ふつう師団動かすのに、
戦闘力発揮させるには、同数くらいの師団外兵員が
必要だったような気もします。

兵站が弱いので、すべてがおじゃん、です。

今のやり方は、1/10くらいだけ動かして、
そこに兵站集中する、ヘタすると抽出して兵站と戦力集中する。
後は張り付いてろ

機動連隊、機動師団=全部が同時に機動展開できるのでなく、機動部隊にもなれますよ、の意
もしくは海外遠征軍団の意味
2016年11月30日 18:20
コトバを正確に使わないから、さまざまな誤解を
招いているのかも?

海上機動団だっけ?
 = 1x 両用戦歩兵旅団
   2x 海外遠征機械化歩兵旅団
海上機動師団?? = 海外遠征軍団

おもに任務は、

 世界非対称大戦等で、米軍団が手一杯になった時、
 湾岸などで、石油利権を守るため、独自戦闘

 同様の事態の時、非対称大規模世界制限戦などで
 ベトナム、シンガポール、台湾などに派遣し、
 守備に入る、戦闘に入る
 主に、海上輸送路を守るため。大きな意味で。

フォークランドやイラク、アフガニスタン、ベトナム戦争は、
大規模動員戦争なのに、限定戦争だった。
同じような事態に、ニホンが巻き込まれる、
これも、おかしい。
資源を確保するため、積極的にやらざるをえないわけだ。
それを国を代表して任務に付くのだから、
巻き込まれるとか、
平和だとか、

偽善もいいかげんにしてもらいたい!

まず、では、自分がカネとエネルギーを
後進国一般市民並みに減らしてから、
いうべきなのだ。

このような状況で、戦闘に参加し、
予算不足、と言うより兵站不足で、とんでも無い結果になった時、
自衛隊が士気崩壊しても、おかしくない。

たぶん、現場は、とんでもない悲惨なパターンも
考えうる。えんえんと偽善して来たので、
インパクトがでかくなる可能性がある。
19190213
2019年04月14日 11:27
まあそういう案も良いかも知らんがもっとスリム化しても良いと思う。
火砲、戦車が無くなるのは致しかたない。
特に関西方面は不必要。
7師団、中部隷下、東北隷下も旅団規模に改編。12は既に連隊が大隊規模なのにどうせヘリが少なくて作戦運用出来ないから現状維持か改編してヘリを南西に回す。
これでようやく最低限度の実行動が実現可能な集中運用と言ったところじゃないかね?
実員は結構少ないよ(さらにその中で動ける人間も)定員で見てもアカンよ。
特科や戦車にしても分散配置しても実際に戦場でモノになるとは思えんし平時の配置だとしても戦略機動が大変。
関西方面はゲリコマ想定(市街地、野外)の訓練と災害派遣に備えれば十分でなかろうか?
かねてから思うけれど、実員が少なく他国の尖兵たる部隊と比べて貧弱な戦闘団が何処まで戦えるかね?
分散配置は歓迎できんし危険度が高い地域には遅滞ができる規模が欲しいし奪還のための槍たる部隊はやはり集中的な投資が良いのではなかろうか?

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