航空自衛隊が直面する危機 ⑤

「航空自衛隊が直面する危機 ⑤」

 昨日の続き。

 [(2) 予算、定員の状況:実質ベースの評価、中長期の収支
 ①名目予算と購買力平価、後年度負担による硬直化
  (省略)

 ②体制整備と態勢維持の資源配分
  (省略)

 ③民間能力の活用:予備自衛官、再任用、国内防衛産業
  (省略)

 (3) 後方組織のSCMの状況
 ①補給本部/補給処の担任区分の状況
  (省略)

 ②装備品毎に最適な後方支援体制への転換
  (省略)
画像

 ③F‐35等FMS装備品の後方支援
 今年度末に三沢基地の第3航空団に配備される予定のF‐35Aは、空自が経験したことのない後方支援体制で運用することとなる。機体も後方支援もFMS(Foreign Military Sale:対外有償軍事援助)によって米国政府から提供され、F‐35事業全体を統括するJPO(Joint Program Office:統合プログラム事務所)によって管理される。米国政府はF‐35事業のプライム社であるLM(ロッキード・マーチン)との契約により、機体製造・修理・改修・整備・補給等を一括委託している。LMと下請け契約を結んだ三菱重工は機体のFACO(Final Assembly and Check Out:最終組立・検査)を行い、完成した機体はLMから米国政府を経由し空自へ納入される。したがって、三菱重工等の国内参入企業と防衛省・空自の間に契約関係は一切ない。同様に、後方支援はF‐35を運用する全ての国・軍が加入するALGS(Autonomic Logistics Global Sustainment:自律型世界兵站支援〈システム〉)とALIS(Autonomic Logistics Information System:自律型兵站情報システム)によって処理されることとなる。
 ALGS、ALISが導入され円滑に運用されるには紆余曲折が予想されるが、紙幅の制約もあり本稿では立ち入らない。空自後方全体の視点から三点だけ指摘すると、まずALGS及びALISという最新のSCM(注:Supply Chain Management:物流管理〈注当ブログ〉)システムの特徴を評価・分析し、補給本部が管理する事務共通システムの次期換装に反映することである。
 次に、関連会社との連携を維持することが重要である。F‐15等はプライム社と包括的な技術連携契約を結び、特異故障や事故等への対応に技術支援を得てきた。F‐35は共同開発国9カ国に加えて日本はじめ数カ国のFMS輸入国が運用する予定であり、空自特有の品質管理や競合する維持部品の入手優先順位、改善・改修等への先行的な対応等に国内参画企業の迅速な支援が不可欠である。JPOが課す厳しい保全要求やリージョナル・デポへの事業拡大等についても企業と防衛省との一貫した対応が必要であり、空自は運用当事者として関与しなければならない。
 最後に、今後F‐35と同様のFMS装備品が増えることが予想される。FMSの特質を踏まえ、米国政府/JPOに対し運用者としての要求事項を適時適切に交渉・調整し得る枠組みと態勢を作らねばならない。F‐35Aは空自のトラの子ともいえる最新型戦闘機であり、これまでとはレベルの違うFMS事業管理が必要である。]

 尾上定正・元空将は、「ALGS、ALISが導入され円滑に運用されるには紆余曲折が予想される」と述べているが、その通りだろう。ALGSやALISは本当に上手く機能するのだろうか。米国のシステムだから空自がいくら努力したところで如何ともしがたいところもあるはずだ。F‐35を運用する他国軍と競合し、維持・修理部品等の入手が遅れるなどの事態が発生するかもしれない。また、最新システムに付き物のシステムの不具合や使用者側の不慣れの所為で空自F‐35Aの稼働率が著しく低下しないとも限らない。

 (4) FMS調達の状況
 ①FMS関連予算の推移と今後の見通し
 空自予算(契約ベース)における為替対象額(一般輸入+FMS)は平成23年度から急増しており、とりわけFMS調達額の増加が著しい。平成28年度防衛予算のうちFMSは4858億円を占め、10年前の約5.5倍となった。空自分は2209億円(正面1834億円、後方375億円)であり、会社別契約実績上位5社に米空軍省(2位)と米海軍省(4位)が入っている。この急激な伸びはF‐35Aの取得がすべてFMS調達によるところが大きい。
 平成24年度から始まったF‐35Aの取得は平成29年度までに28機、平成30年度は6機(881億円)要求されている。関連するFMS調達には初度費、国内企業参画関連経費、ALGS関連経費、ALIS端末取得等の契約が含まれ、平成24年から28年までの総額は6000億円をはるかに上回っている。F‐35AはF‐4後継機として2個飛行隊分42機を取得する予定であり、次期中期防には8機が計上される見込みとなる。なお、今中期防には「近代化に適さない戦闘機(F‐15)について、能力の高い戦闘機に代替するための検討を行い、必要な措置を講ずる」と記されており、F‐35Aもその選択肢として排除されていない。
 いずれにしても相当な予算がF‐35Aの取得に必要となるが、F‐35の場合、取得に係わる初度的経費に加え、後方支援の維持費(機体及び支援器材の補用部品、外注整備、ALISの維持費)が体制整備完了後も継続的に発生する。空自は既に4機を取得し米国で操縦者教育等に運用しており、後方体制整備の初度的経費と合わせて約130億円が計上されている。継続的に発生する維持費の規模は不明であるが、空自の後方経費全体への影響を十分考慮する必要がある。
 FMS調達による装備品の取得はF‐35Aにとどまらず、空自だけでもE‐2D、AWACS能力向上、グローバルホーク等今後も増加する。他自衛隊でも、陸自のオスプレイ、AAV‐7、海自のイージスシステム、C‐130R(後方支援)と増えており、イージス・アショアが導入される場合、システム全体がFMSとなる可能性が強い。すなわちFMSは自衛隊の主要装備の取得、運用、維持に不可欠かつメジャーな制度に質・量ともに転換したと考えるべきである。]

 FMS調達の増加が自衛隊の運用・後方体制や国内防衛産業に負の影響を与えることが危惧される。また、F‐35Aの場合は後方支援の維持費―高額且つ米国に支払われるカネ―が体制整備完了後も継続的に発生する。今後、これが空自の後方経費に重くのしかかることは明白だろう。

 ②FMS調達の管理体制
 FMSは米国政府の認可が必要な秘に関わる装備品等の取得に不可欠な調達方式であるが、有償援助の訳が示すとおり米国政府の意向に左右される場合が多々ある。米国は多くの同盟国とFMS契約を結んでおり、各国との契約をまとめて米国企業に発注するため納期が一方的に延期されたこともあった。
 このような不具合を改善・調整する枠組みとして防衛省は平成28年度、防衛装備庁とDSCA(Defense Security Cooperation Agency:国防安全保障協力局)との間にSCCM(Security Cooperation Consultative Meeting:安全保障協力協議会合)会議を設置し、年1回を基準に各種協議を行った。装備庁と各自衛隊はFMS連絡調整会議を実施し対米調整の認識共有を図っているが、年に一度の会合では不十分と言わざるを得ない。
 今後F‐35の後方支援契約の細部履行状況をモニターし適時に所要の調整・交渉を行うためには、JPOに対応する組織を現地ワシントンDCに設置し、恒常的に業務調整を行う体制が必要であろう。少なくとも、空幕内にFMSを専門的に管理する部署が無いという現状を改善するため、一連の契約手続きと執行状況を一元的に管理する部署を設置し、FMS連絡官経験者等を育成して制度に精通した人材を配置すべきである。
 空自は現在FMS連絡官及び機種担当連絡官を数名、米国各地に派遣している。装備庁及び各幕も連絡官を派遣しているが、これら連絡官は中央調達/地方調達の連絡官や個別の機種担当連絡官として派遣されているため、業務は担任調達/機種に限定され、情報収集・発信も個別対応となっている。現状は、点として駐在する連絡官が派遣元機関とのみ線でつながっている状態であり、点を束ね面として展開するノード(結節)を時差のない現地に設置し、点とノード及び各派遣元がネットワークを構成する体制を作るべきである。]

 FMS調達が増えれば米国側との調整・交渉が重要になることは素人でも分かるが、どうやら空幕や防衛装備庁の体制は十分ではないようだ。各幕、装備庁ともに動きが遅いと言わざるを得ない。

 ③米国の軍事技術管理
 米国は同盟国に対し軍事技術の保全措置を米軍と同じレベルで要求しており、F‐35Aについても運用・整備に携わる自衛官の資格付与に厳格な基準を設けている。三菱重工はFACO施設の建設にあたり、監視カメラ、立入制限、物理的な防護と隔離など様々な要求を満たさなければならなかった。製造作業に従事する工員にも厳しい条件が付いたと聞く。企業としてはLM社の下請けという立場もあり条件に従わざるを得ないが、資格を満たす工員の確保や施設整備は大きな負担となる。
 このような保全措置を求められる装備品は今後増えると思われ、会社の負担を軽減し、該当装備品の取得・運用・後方支援に支障を来たさないためにも、空幕の主管部署を明示し装備庁との連携を図るなど組織的な対応が必要である。]

 F‐35Aの調達には、FMS調達に付随する問題のみならず、後方支援体制や情報保全に係わる事柄など、様々な問題が横たわっていることが分かった。果たして、F‐35Aの調達、運用、後方支援(整備・補給等)などが順調に進むのか非常に心配になってきた。

 以下、明日に続く。

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この記事へのコメント

現実的分析と現実的対処
2017年11月13日 02:32
現状の現実分析は次のようになります。

A、ニホンの国自体、国民、産業界は米国との従属的同盟で大きな利益と安全を得ている。

ずばり言えば、トヨタの儲けは、米国との同盟から来ている。
トヨタが偉大で国民が食わしてもらってるわけでは無い。

すなわち、現実的対処は、以下

B、米国とのつきあいとしてのFMS装備品購入は
防衛軍事費増額分で補うべき

C、軍事技術的には新技術、新戦術、新戦技の導入研究費と割り切る

C、それとは別に実戦力確保分、特に後方兵站整備分の増員増額購入が必要になる。

D、同時に戦略的な防衛軍事産業育成成立が必要になる。

立体的な民間動員、戦時民間徴用をも含んだ増員増額が必要になる。

具体的には当面GDP2%
戦略同盟国へのミドルテク稼働実用装備の提供能力

政治判断として、国民の覚悟と戦略として、
当面、FMS調達購入分は別枠増額くらいにしないと
組織態勢自体が崩壊して、実戦力が崩壊する怖れがある。

米国はそのくらい、計算付くでやっていると思われる。
それを跳ね返し実力を獲得するならば、
むしろ重用され立場も変わり、
世界戦略に参加する枠も空けられるであろう。

言いかえれば、帝国も手も足りない。
用無しを養う趣味も余力も無い
と言ったところであろう。
現時点でのFMS評価
2017年11月13日 02:50
A、イージス
戦力は出てるが、過剰装備な可能性が高い。
無意識の合議的謀略である可能性もあるであろう。
北朝鮮の核ミサイル問題自体が。
その問題を韓国の国力を削ぐこと、中共極東ロシア含む大陸極東の混乱と勢力削ぎのために使い無駄な消費をネット相殺して投資回収すべき。

B、イージスアショア
究極的には無駄な投資、必要悪になる。
だが、避けて通れない。
別枠とし、上記と同じ意図、大陸分断のネット相殺費用と戦略的には位置付ける。
同時に、長距離高価値目標打撃の砲台としての可能性を探るべし。

C、F35A
これも避けて通れない道だった。
が、最悪、実験部隊で終わることも覚悟。
実戦力はシビアに評価すべき。
見通しは暗いことを冷静に評価すべし。
データリンクは別の問題で、次期国産戦爆機Fゼロで
実用換装とすべし。
F35Aは、良くてデータリンク偵察戦くらいの位置付けを覚悟すべし。だが、そうであるならば、

D、F35B
すべてが、後方兵站組織整備と予算増額とF35A実戦化のすべてが上手く行った場合、
いずも次期拡大型汎用兵站戦闘艦+F35B導入
は視野に入る。
だが、非常にハードルは高い。高く設定すべき。
同時にF35Bは軽空母固定配備としない。
前線陸上基地と一時汎用兵站艦運用のシームレス機動運用とする。
むしろ兵法的には、前線の分散したセンサーになる。
運用機数は少数の余裕を持った汎用一時運用となり、
しなの
的な運用となる。
そんなに搭載機数は多くならないし、すべきでも無い。
オスプレイについて
2017年11月13日 02:50
E、オスプレイ
これは、見通しは明るい。
整備日本メーカーも積極参加し、
共同の部隊
共同の整備部隊
共同のメーカー整備
として帝国軍運用とし、
実質、ニホン軍も日本メーカーも帝国軍の主体として参加と言うか、主催側に回る。
どんどん日本メーカー日本整備部隊にも食い込ませる。
とうめん、その費用は、対戦車ヘリとニンジャヘリ部隊の稼働を落としてほぼゼロ化してねん出する。
今、そこにある危機
2017年11月13日 02:59
たとえばこのままでは、
整備不良兵站不良で北方張り付け重装機甲集団は
まったく動かなくなるが、

せめて最低限整備して有事の張り付け守備、迎撃に
使うべきだと思うが、どう考えているのか?
それは消耗戦のすりつぶし迎撃になるのだが、
そのような役目を整備不良の半減化した戦力で任務実施させるのか?

戦場制空、対地密接支援を実施できる改良型
スペックで無く、実際の陸上連携作戦の連携能力を
改良したF2部隊のためなら費用も捻出もしようが、

北方部隊を無力化してまでF35A部隊を整備費投入して
F35A部隊は何が出来るのか?

その具体的裏付けと、将来の見通し、戦略はいかなるものか?
非常に疑念があるのだが?
現実
2017年11月13日 03:12
まあ、現実には、

共食い整備
抽出部隊
特に兵站部隊に抽出編成

すれば北方集団全体で
2個張り付け重装連隊戦闘団程度抽出
できる

現状の戦略ってそれなんだと思う。
ただこのままだとそれすらも危うくなって来る。

と同時に、敵が発想を変え、
なんらかのローテク浸透決戦に持ち込めた場合、
実数自体が足りなくなってくる。

より妥当で安全で保険になるのは、
ロースペック、ローテク化してでも実稼働数を確保することなのである。
それが稼働すれば、練度の優越は明らかだ。

シロートが考えてるより、F4改と旧式北方集団の
実戦力は非常に高い。

機動連隊とF2の実際の戦闘価値がそれをはるかに数倍しようとも、だ。
戦う相手は米軍でも自体隊でも無い。
中共軍か韓国軍か北朝鮮軍か良くてもロシア軍だ。
韓国軍などは非常に弱い。
だが、非常に数がある。
連隊単位で戦っていては、あっと言うまに消耗してしまう。
10万単位ですりつぶして
敵を100万単位で消耗させ国家社会を崩壊に追い込む
そういうハナシなのだ。

そういう未来はすぐそこに来ている。
従来ウヨクの甘ったれたシャレの世界とは違う。
それが現実だ。
実際
2017年11月13日 03:23
実際問題として、グレーゾーンであろうが
数万単位で浸透して来る韓国特殊部隊入りの難民船団を
海岸で機銃掃射とかできるのか?空自は?

切実な問題はそっちになる。
趣味でステルス戦とかやられても非常に困る。

訓練機に機銃ポッドでも積んで、覚悟を持って海岸機銃掃射の訓練でもしてくれ。

すなわち、大問題は本当は

えせシビリアンコントロール

をしている官僚、政治家、国民の側にある。

シビリアンコントロールと言うからには、
不見識で済まされる問題では無い。

負けた場合、過去にさかのぼって
ハトヤマムラヤマくんなどには訴追すべきだと思う。

不見識で済まされる問題では無い。
実際に、購入計画と決定まで握っていたのだから。

同様にめぐみさんを見捨て北朝鮮の跋扈を許した罪も
秋田に核弾頭が落ちた時は徹底的に追及したい。
旧社会党の諸君、マスゴミの諸君、オールオキナワの諸君など。
実際の工作費の流れなどを突き止めて訴追すべき。

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