F‐15は足りるのか?

「F‐15は足りるのか?」

 昨日紹介した小林春彦氏の記事(「軍事研究」12月号《平成30年度『自衛隊航空戦力』の予算案 空自の次期主力“F‐35Aと国産戦闘機” 特別公開!X‐2ステルス先進技術実証機》)では、X‐2取材記と併せて、防衛省平成30年度概算要求の陸海空自衛隊航空戦力に係わる部分を概観している。その中から、航空自衛隊戦闘機部隊に関する記述を拾ってみる。

 [航空自衛隊は26中期防において、F‐4後継となる次期戦闘機F‐35Aの調達、現有戦闘機の能力向上改修、ならびに戦闘機部隊等の体制移行を並行して進めてきた。そして、26中期防の最終年度目となる平成30年度概算要求では、F‐4EJ改からF‐35Aへの機種更新に伴い、百里基地のF‐4飛行隊を整理し、三沢基地にF‐35A飛行隊を新編することとなった。また、この航空自衛隊最初のF‐35A飛行隊は、百里基地から移動してくる第302飛行隊になることも明らかになった。
 これまでの26中期防における戦闘機部隊等の体制移行の経過をまとめると、平成27年度は築城基地の第8航空団から第304飛行隊を那覇基地に移動させ、那覇基地の戦闘機部隊を第204飛行隊と第304飛行隊の2個飛行隊、F‐15戦闘機約40機に増強。そして平成28年1月末、第83航空隊を廃止して第9航空団が新編されたのに続き、平成29年度には南西航空混成団を廃止し南西航空方面隊を新編した。
 続いて平成28年度は、第304飛行隊を送り出して第6飛行隊のみとなった第8航空団に、三沢基地の第3航空団から第8飛行隊が平成28年7月末までに移動。第8航空団はF‐2戦闘機の2個飛行隊に改編されている。
 また、平成28年8月には、百里基地の第7航空団からF‐15部隊である第305飛行隊が新田原基地の第5航空団へ移動し、11月上旬には新田原基地からF‐4部隊の第302飛行隊が百里基地に移動。第7航空団は、第301と第302の2個飛行隊から成るF‐4戦闘機の航空団に改編された。
 そして、F‐2装備の第8飛行隊が抜けて1個戦闘飛行隊の配備となる三沢基地にて、「臨時F‐35A飛行隊」が操縦士約20名と整備員など約20名、合計約40名の隊員と1機のF‐35Aの陣容で平成29年度末に新編され、平成30年度以降、9機が順次配備される計画である。この臨時F‐35A飛行隊の機材と人員を母体に、第302飛行隊は平成30年度中にF‐4EJ改からF‐35Aに機種を更新し、人員約200名、保有するF‐35Aは10機の編成となる。
 さらに平成31年度からの次期中期防では、三沢基地からF‐2装備の第3飛行隊が百里基地へ移動する。そして、航空自衛隊最後のF‐4飛行隊となる第301飛行隊は、平成32年度までF‐4の運用を続けた後、百里基地から三沢基地に移動しF‐35Aに機種更新する計画となっている。
 また次期中期防では、「平成26年度以降に係わる防衛計画の大綱(25大綱)」に基づく偵察飛行隊の廃止に伴い、同隊隷下の第501飛行隊を母体とする13個目の戦闘飛行隊が、F‐15を装備して百里基地に新編されることが決まっている。それまでの間、第3飛行隊は百里基地唯一の戦闘飛行隊として首都圏防空の重責を担うこととなる。]
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 南西地域の防空体制強化のための一連の空自戦闘機部隊の移動は記述の通りだが、懸念するのは13個目となる戦闘飛行隊の新編だ。当該飛行隊は「F‐15を装備して百里基地に新編される」とあるが、新たな戦闘飛行隊を編成できるだけのF‐15戦闘機があるだろうか。
 現在、空自にはF‐15装備の戦闘飛行隊が7個ある他、飛行教育航空隊の第23飛行隊や飛行教導群などにF‐15が配備されている。空自が保有するF‐15は約200機。1個戦闘飛行隊に配備されているF‐15は約20機として、7個で計約140機。その他で約30機とすると、約30機の予備機がある計算になるから、これを利用すれば1個飛行隊の編成は可能と思われる。
 しかし、当ブログで紹介した尾上定正・前航空自衛隊補給本部長/元空将の記事(「軍事研究」11月・12月号)を読む限り、部品不足でF‐15戦闘機の稼働率は随分低下しており、“共食い”整備も常態化しているようだ。推測するに、F‐15の予備機が約30機あると言っても、飛べる状態にある機体は少ないのではないだろうか。だとしたら、1個飛行隊を新編することなぞ到底不可能だろう。
 となると、13個目の戦闘飛行隊はF‐15ではなく、F‐35Aの追加調達で新編することになるかもしれない。否、そうならざるを得ないだろう。

 一方、F‐15戦闘機のPre‐MSIP機をどうするかという問題もある。小林氏は次のように述べている。
 [F‐15のPre‐MSIP機については、26中期防において「能力の高い戦闘機に代替するための検討を行い、必要な措置を講ずる」と明記されている。このPre‐MSIP機、すなわち非近代化機に関する今後の方針について、航空幕僚監部は検討中と説明しており、平成31年度からの次期中期防衛力整備計画に向けて、平成30年の夏頃までに何らかの方針が明らかにされるものとみられる。
 ところで、この「能力の高い戦闘機」が何を指すのかは、防衛省・航空自衛隊内でもさまざまな意見がある。しかし、現実的にはF‐35Aの追加調達、もしくはF‐2後継機となる将来戦闘機をF‐15非近代化機の後継機にも充てるという二つの選択肢が有力となりつつあるようだ。
 二つの選択肢を比較すると、実機が存在するF‐35Aはすでに性能が実証されている点で有利だ。しかし、会計検査院がさる9月13日に公表した「次期戦闘機(F‐35A)の調達等の実施状況についての報告書」で明らかにしたように、前払い金を米国に支払ったが、日米間で定められた予定時期に米国が調達予定品目を提供しなかったなど、FMS(対外有償軍事援助)調達に起因する問題点も少なくない。
 これに対し、将来戦闘機は、冒頭でも紹介したとおり機体、エンジン、アビオニクス関連のさまざまな要素技術の研究試作が進められており、開発にあたってのリスクは可能な限り低減されている。また、F‐2の生産終了により国内の戦闘機生産・技術基盤の衰退が懸念されるなか、わが国の航空機・防衛産業は将来戦闘機の開発着手に大きな期待を寄せている。こうした状況を勘案して、F‐2およびF‐15非近代化機の後継機をどのように整備する方針なのか、その行方を注視したい。]
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 F‐15Pre‐MSIP機をどうするか、防衛省・空自が結論を出せないのは、F‐35Aの追加調達やF‐2後継機開発の可否と密接に関連しており、とても防衛省・空自だけでは判断を下すことができないためだと思われる。
 一番手堅いのは、F‐35の追加調達だ。この場合でも、将来的に「いずも」級護衛艦での運用を見据え、F‐35Bを調達する選択肢もある。ただ、F‐35の追加調達には「FMS調達に起因する問題点も少なくない」ことは、小林氏が指摘される通りだ。
 また、国内の戦闘機生産・技術基盤を維持するためには、F‐2後継機の国内開発又は日本が主導する形での国際共同開発が必要であることは間違いない。
 しかしながら、そのためには開発に必要となる莫大な予算を如何に捻出するかという問題に加え、技術的ハードルも立ちはだかる。小林氏は「機体、エンジン、アビオニクス関連のさまざまな要素技術の研究試作が進められており、開発にあたってのリスクは可能な限り低減されている」としているが、果たしてそうだろうか?
 加えて、F‐15近代化改修機のレーダーをAESAレーダーに換装するなどのさらなる改修も必要だと思う。

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