瀬島龍三氏はソ連のスパイだった

「瀬島龍三氏はソ連のスパイだった」

 初代内閣安全保障室長の佐々淳行氏は、「嵐を呼ぶ男」と呼ばれていたそうだ。同氏の周りで度々大事件が起こるからだ。しかもそれは、佐々氏が警察に入ってからの話ではなく、まだ小学生の頃からであることを同氏の近著「私を通りすぎたスパイたち」(文藝春秋)を読んで知った。
 昭和16年10月、佐々氏11歳の時、ソ連のスパイ、リヒャルト・ゾルゲが検挙された。共に検挙された中に朝日新聞記者の尾崎秀実がいた。尾崎は、ゾルゲに「日本は北進せず」という重大情報を伝えていたのだが、佐々氏の父・弘雄氏は尾崎の同僚で、且つ近衛文麿を囲む「昭和研究会」に尾崎を誘ったのが弘雄氏だったのだ。弘雄氏自身は、事件とは関係していなかったが、身の危険を感じ、尾崎との関係を示す書類等を一切処分した。その処分を任されたのが佐々氏で、細かくちぎって風呂の焚き付けにしたという。
画像

 佐々氏が警察に入って最初に関わったスパイ事案は、「ラストボロフ事件」の後始末捜査だったという。
 ラストボロフ事件とは昭和29年、ソ連の情報機関NKVD(内務人民委員部=KGBの前身)所属の駐日ソ連代表部二等書記官ユーリー・A・ラストボロフが東京のアメリカ大使館に駆け込んで保護を求めたことから始まる。彼の供述から、終戦後、シベリア抑留中の日本人に対するエージェント工作の実態が明らかになった。早期帰国をちらつかせるなどしてソ連のエージェント(スパイ、協力者)になるよう誓約させられた「誓約帰国者」が約500人、その他、情報提供者を含めた潜在エージェントは8000人以上に上ることが判明したのだ。
 興味深いのは、この誓約帰国者の中に元大本営参謀で元伊藤忠商事会長の瀬島龍三氏がいたことだ。佐々氏は、ラストボロフ事件の後始末捜査の過程で、ソ連大使館のKGB要員と思われる人物と瀬島氏が接触するのを確認した、とはっきり書いている。瀬島氏は、スリーパーとしてソ連に協力することを約束した「誓約帰国者」だったのだ。
 瀬島氏がソ連のスパイである、と指摘した人はこれまでもいたが、公安関係者が断言したのは初めてではないだろうか。しかも、瀬島氏は「東芝機械ココム違反事件」にも関与していたという。
 東芝機械ココム違反事件とは、東芝機械がダミー会社を通じて工作機械をソ連に不正輸出し、この工作機械で切削されたスクリューを取り付けたソ連の潜水艦のスクリュー音が劇的に低減したしというものだ。これによりソ連潜水艦の探知が難しくなった米海軍に大損害を与えた。
 この不正輸出には、伊藤忠商事が大きな役割を果たしており、その黒幕はソ連のスパイ瀬島氏だ、と佐々氏は指摘している。
画像

 佐々氏はまた、秘密裏に米国に派遣され訓練を受けていたことを初めて明かしている。昭和35年、佐々氏は米国が開発途上国(当時、日本も開発途上国扱いだった)の国際警察官養成を目的として設けていた訓練セミナーに6カ月間派遣され、座学や尾行、張り込みなどの実務訓練を通してスパイ摘発技術などを学んだそうだ。

 ハニートラップについても書いている。ハニートラップにひっかからないようにするには、「日本でモテないのに外国に行ったからといって急にモテるわけがない」と自覚することだが、これが難しいらしい。
 「ミトローヒン文書」には、1970年代初め、KGBのハニートラップにひかかったモスクワの日本大使館に勤務した暗号担当官の記述がある。この人物は、外務省と世界各地の在外公館の間の電文をKGBに提供していたという。しかも、日本の暗号システムそのものをソ連側に伝えており、モスクワは日本外交の手の内を殆どすべて知りうる状態にあったというから酷いものだ。
 ちょっと面白かったのは、佐々氏の香港領事時代の話。香港を訪れた多くの国会議員に女性を所望され、売春専用ホテルに案内したという。後年、佐々氏が政府委員として国会答弁に立つようになった時、困った質問をする社会党議員のところに挨拶に行ったという。「先生、香港は楽しかったですね。この質問、やめてくださいよ」と言うと、大概やめてくれたそうだ。これも一種のハニートラップか。

 佐々氏は、スパイを取り締まる外事警察の苦労も書いている。佐々氏が大阪府警外事課長の時、睡眠もろくに取らず、苦労して北朝鮮諜報組織の割り出しに成功する。だが、上層部から「泳がせろ」と指示され、涙を呑んで検挙を断念したという。
 尤も、検挙したところで、日本にはスパイを取り締まる法律がないので、微罪処分終わる。まったくおかしな国だが、この状況は今日も変わっていない。一日も早く「スパイ取締法」を制定すべきである。

 「スパイ取締法」と共に必要なのは、中央情報局だ。佐々氏は、「インテリジェンス機関なくして、独立主権国家たり得ない」として、政府の情報収集・分析力強化を図るため、米中央情報局(CIA)のような情報機関=「内閣中央情報局」の創設を提言している。
 「残念ながら内閣情報調査室は、情報機関としてとても国際水準とは言えない。目も耳も、手足も持たないからである。
 実際、国際的なインテリジェンス・コミュニティにおいて内閣情報調査室の存在意義はほとんどない。諸外国の情報機関に相手にしてもらえないのである。海外情報は完全にアメリカ依存なのだが、CIAの要らない情報をもらっているのが現状なのだ。
 国際インテリジェンス・コミュニティのメンバーとして、認めてもらえるのは警察庁警備局公安課や外事課といった部署である。
 加えて、情報を総合化する仕組みが不十分という問題がある。
 情報を扱う政府機関には、ほかにも外務省国際情報統括組織、防衛省情報本部、公安調査庁、海上保安庁警備救難部がある。また、防衛省情報本部の下には自衛隊の専門部隊がある。陸上自衛隊は情報科が独立して中央情報隊を持っている。また海上自衛隊には情報業務群が、航空自衛隊には作戦情報隊がある。
 しかし外交、防衛、安全保障、国家の危機管理という重大局面では、インテリジェンスの総合力が不可欠になる。つまり、通信傍受や衛星監視など『シギント』で収集・分析した情報と、人的要素の情報である『ヒューミント』を総合した力である。
 わが国の場合、まずヒューミントが決定的に弱い。シギントについても十分とは言えないが、総合する力は皆無に近い。中央情報局を設置して強化すべきポイントがそこにある」。
 佐々氏は、昨年12月に発足した外務省国際テロ情報収集ユニットを書き落としているが、取るに足りないからだろう。内閣情報調査室を拡充強化し、「中央情報庁(局)」を作るのが最も現実的ではないだろうか。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 5

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

ニックネーム
2016年05月19日 23:11
瀬島龍三のような正真正銘のクズが大手を振ってのさばっていたのが戦後日本の最大の恥部

この記事へのトラックバック